between #4 Black Aura

2018

Urushi, Acrylic, Photo

ReKOGEI
石橋 友也 京田充弘 嶋光太郎 松本祐典 平田正和 沼俊之 
堀川淳一郎 西尾美智子 橋本孝久 水落大 引地悠太 新宅加奈子

漆の持つ美的質感を、虚実のレイヤーを行き来しながら探索する。

​ 2枚1組の写真は、上段が漆彫刻を実写撮影したもの、下段が3DCGによるものである。



 黒い漆の持つ深みと美しさを指す「漆黒」という言葉からイメージされるように、漆の質感はどこか「非現実的」で不思議な印象を我々に与える。


 本プロジェクトでは、CGと現実という虚実のレイヤーを行き来しながら、古来より我々を魅了する漆の美的質感の探求を行うとともに、個人向けソフトの普及が進む3Dモデリング・3DCG技術を導入して漆工芸の制作プロセスと造形性の拡張を試みた。

  制作プロセス

  1. 個人向け3Dモデリングソフトで色、透過度、粒度等のパラメーターを設定し、漆のテクスチャーをシミュレート。
     

  2. 漆彫刻の仕上がりイメージを確認しながら3Dデータを造形。造形のモチーフは漆の表面が与える非現実的な印象から連想し、浮遊する物体とした。
     

  3. 2つのオブジェクトの衝突を3Dシミュレーション。物理演算によって複雑な3Dデータを生成し、手業では困難な造形を導入。
     

  4. ソフト上で照明や背景を設定し、様々なアングルで3DCG画像を書き出し。漆の表面の美学をバーチャル上で探求するとともに、彫刻の仕上がりイメージを確定させる。
     

  5. 2つのオブジェクトの3Dデータを3Dプリンターで出力し、何層にも及ぶ漆塗りと研磨を施す。
     

  6. シミュレーション時の照明や背景をスタジオに再現し、漆彫刻を撮影。撮影に用いた造作を必要最小限のレタッチで消去。
     

  7. 同じアングルから撮影した漆彫刻の写真とCG画像を並置​。

【工芸ハッカソン2018】渋谷EDGEof, 2018年12月1日〜3日

Photo by Yuki Tsutsumi

 本作は、ライフスタイルの変化や後継者不足といった課題を抱える伝統産業に対して、テクノロジーの視点から新たな展開をもたらすことを目的とした国際北陸工芸サミット「工芸ハッカソン」の支援を受け、富山県高岡市の漆職人、原型師と県外のアーティスト、エンジニア、フォトグラファー等が協同したプロジェクトである。

 2017年に第一弾となるAIによる造形を導入した漆彫刻 "between #1 #2 #3"
を発表。その制作プロセスを通じて、「漆塗り」が、その言葉の響きとは裏腹に、職人による何十、何百時間もの研磨を要する過酷な作業であることを知り、その偏執的とも思える漆の表面の美学を、現代的なテクノロジーの視点から探求することを目的として発想したのが本作である。

 結果として、個人向けツールとして普及が進む3Dモデリング、3DCGを活用し、人間の手業では困難な造形を導入するとともに、仕上がりイメージを先に確認するという制作プロセスの拡張を試行することができた。また漆彫刻の3DCGイメージと実写写真の比較では、実彫刻の光の反射のにじむような輪郭線がシミュレートでは困難であることが判明し、今後は漆黒特有の光の反射に焦点を当てたプロジェクトを行う予定である。

©2018 Tomoya Ishibashi